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合唱のこと、英語のこと、本のこと、友達のこと、仕事のこと・・・とりあえず、ダラダラ続ける日記です。

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日本語ベラベラなのがいかんのじゃ。
●という話を、マエストロが話して下さるんですが。

クラシックの合唱なんてやってると、実に、実に
日本語はクセモノの言語である、と頭を抱えてしまうものなんであります。

母国語だから、意味も
わかりやすいし、
訴求力が高いし、
歌いやすいんじゃないの~?

と思われるでしょうけど、

西洋音楽の曲の中で、
音としての響きの美しさを
出そう、とあがいていると、

実は日本語特有の
発音構造がもんのすごく
邪魔だったりするんです。

西洋の言葉の発音の場合、

まず子音が先に立って、
その後に母音が続いてくる、
という場合がほとんどです。

ところが日本語の場合は、
あいうえお以外は、全て子音と母音が渾然一体となった音で発声される。これが、実は難しいのです。

●母音だけ聞こえてれば、後はどうとでもなる! と普段教えられている(^◇^;)

歌う場合、どこできれいな
響きが出るか?
というと、子音ではなくて、
母音のところ。

簡単に言うと、
子音で地ならししたところに、母音という発生器を
据え付けて、そこで初めて
1音ずつがきれいな音になって響くわけです。

例えば『ウエストサイドストーリー』の「トゥナイト」で見てみると、

Tonightのtoとnightに音符が
割り振られています。

母音のところを、ひらがな表記にしますと、

Tぅ nあいt 

です。

この「ぅ」と「あい」の
響きが美しく聞こえないと、
実は全く曲にならない。

子音も鳴らさなきゃ、と
ガンバると、それしか聞こえなくて、肝心の母音の響きがなくなっちゃって、結果的に、美しい響きが前に飛ばない。前に飛ばないってことは、要するに、聴いてる側にキレイに聞こえないってこと。

んなもんだから、うちの
マエストロいわく、
「言葉なんて、実はどうでもいいんですよ。母音で響かせることの方が大事です。言葉は、つけられる人がつけておけばいいんで、つかないところは、母音だけでつなげてやってごらんなさい。意外とちゃんと聞こえてしまうものなんですよ」
だそうです。

ほんまかいな?!

と思ったんですが、ライブの時、試しに高くて大変なところを母音だけでやってみました。そしたら、ちゃんと言葉としてお客さんは聴いていたらしい……です! 後で聴きに来てくれた友人に確かめました。

うーむ、脳が補完してくれてもいるらしい。便利。
 ↑
※磐田バッハのマタイ全曲演奏会前の強化合宿では、みんなまだ言葉が回ってなくて、そりゃもう、真っ青!(2月本番の1月合宿なのにぃ!)で、口々に「いいんだよ、母音でつなげていけば! うん、きっと、誰かが言葉を言ってくれるよ!(って、誰が~!)」と慰めあったのでした………。

先日のソーニョ練習の時も、こっそり母音唱法でやってたんですが。

MiskinisのAve Mariaの真ん中あたり(16~17小節)で、ソプラノが

E-Fis(F♯)-Gis(G♯)-Fis(F♯)
Je-su,        Je-su

とやるとこがあるんですが、

これ、子音のj-s j-sを
一生懸命やろうとすると、

なんか、悲鳴状態になっちゃうんですよー(ToT)音程も高くて半音階だし。

キリストのことなんで、
一番大事な歌詞でもあるんですけど、

一番大事な歌詞の、
一番の聞かせどころが
絶叫系悲鳴じゃ、台無しですよね………( ̄。 ̄;)

で、言葉の発音は、もう
他のパートにおまかせして、
私は[e]-[u], [e]-[u]でやっちゃいました。

結果、その方が
安定した響きになったように思います。

●西洋語に比べて日本語の何が難しいか?

という話に戻りますが、

子音と母音がくっついちゃうのが普通、の言葉である上に、現代語の発音は、結構響きが浅い……というか、口先でチャキチャキ話している。

マエストロが以前、信時潔の曲をイタリアに持っていく前に、(曲の中身が非常に能狂言の世界的なので)能狂言の先生の教えを乞われたことがありまして。

その時のお話では、日本語の発音発声は、室町時代以前と以後くらいで大きな変化があったのではないか、との事。(そう言えば、英語にも大母音推移、とかいうのがあったらしい。昔の英語発音は、今のものとは、てんで違って聞こえるらしいです)

平安から室町くらいは、
端的に言えば、能狂言で使われているような、口腔の奥の方で響かせる感じの発声をしていたらしいです。

それが、江戸に入ってからは、いわゆる江戸っ子言葉の
「江戸っ子だってねぇ、寿司食いねぇ」的なアップテンポで、口腔の比較的前の方で発音する発声に変わっていったんですって。

政治の中心が関西から関東へ移っていった、というのも関係してるのかなぁ。

で、ともかく、現代語になると、ほとんど口腔の奥の方で発音することは日常的にありません。キビキビした感じで良いのですが、そうなると、母音のうちでも「イ」とか「エ」は、唇を左右に引いて、ちょっと平べったいサウンドを使って表現するようになった。

これが、歌う時、大きな障害! 男声ではあまり感じないんですが、女声では、「イ」と「エ」が出てきた瞬間に、現代日本語発音の平べったい音になりやすい。

女性の方が日常的に
「えーっ!」とか、
「いいー!」とか、
叫ぶからだろうか。

※そー言えば、「あ」も難しい。
東日本復興ソングの「花はさく」の聞かせどころの「はな~は は~なは はなはさく」の「な」だけ、なんか平べったくベトーっとした音が鳴っちゃって台無しになりやすい。音形のせいかしらん。ドイツの少年合唱団と一緒に歌った時、彼らはha-na-wa ha-na-wa ha-na-wa-sa-kuで発音してて、そりゃあきれいな「な」でございました。ちゃんとNの口をしてから、Aの母音に入るので、美しいのだなー。

室町くらいの深い響きの母音は、どーいう感じか?
というと、野村萬斎さんのセリフ回しを思い出していただけばよい。

「これはこのあたりの者でござる。やいやい、太郎冠者、あるか」みたいなヤツです。

南京玉すだれの口上とかも、いいかもしんない~(≧▽≦)

能狂言の、口腔の深いところで響かせる倍音は、実はドイツリート的なのかもしれませんねー。

というわけで、
現代日本語の達人である
現代人の私たちは、
つい日常の言語感覚で
日本語の曲を歌ってしまい、
ドツボにハマるのであります。

現代語発音も、うまく使えば、いい感じ~(≧▽≦)で使えるところもたくさんあるので、最近マエストロは、従来の基本音型3つの使い分けに、この古語風(リアrear)と現代風(フロントfront)も加えてチェンジするように指導されてます。ほとんど車のシフトチェンジ状態~(≧▽≦)。

※この間なんか、廣瀬量平の『海鳥の詩』で「ゆくえ」というのを古語風に、
「ゆくゑ」(発音はiyu-ku-weで、ご丁寧にもkは撥音ではなく、鼻濁音的)で考えるといい、と教えて下さり、なるほど、その方がここではハマる! と喜んでメモしてしまった。

だいたいにおいて、譜面に、コレコレのことを(自分に分かる形でいいんですが)書いておけ、という指示がたくさん入ります。特有の用語がたくさんあって、それをきっちり書いておかないと、置いてかれてしまう。

みんなの共通認識で、用語を決めておくと、効率的に短時間で曲が整う、というのがマエストロの持論なんでありますが、確かにこの方法、便利なんです。

基本音型3つについては、また改めて書いてみたいと思いますが、フロントだ、リアだ、と一言譜面に書いておくだけで、要求される音に入ろう、という態勢が出来ますから、ラクチンです。

「出来る、出来ないは別として、まずやろうとすることが大事なんです」
 ↑
出来ない群れである私たちを、叱咤激励して下さるマエストロの口癖でござる。
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